もう一人の保護者として私たちができること(河北KOLNETより)
東日本大震災 震災遺児/社会が育む意思を示そう
(河北新報社 KOLNET社説より)
http://www.kahoku.co.jp/shasetsu/2011/07/20110730s01.htm
発生時に特に被害を受けやすい「災害弱者」は、その後もつらい立場
に置かれがちだ。保護者を亡くした子どもたちはその典型で、支援を求
めようにもすべさえ知らない状況にある。
突然、両親を失った孤児のダメージは計り知れない。
精神的な支えとともに、経済的なよりどころを喪失し、育ちゆく基盤が
根こそぎ奪われたに等しい。
父親、母親の一方を亡くした震災遺児の苦境も著しい。もともと母子、
父子世帯だった子どがおり、結果的に「孤児」となってしまったケースも
少なくない。住まいを失い、離職を余儀なくされた親が多く、十分な配慮
が必要という意味では、孤児とひとり親の間に大きな違いはない。
災害や病気などで親を失った遺児らの支援団体「あしなが育英会」
(東京)が分析した被災状況で、津波遺児の過酷な成育環境が浮かび上がる。
岩手県では母子世帯の母親が津波で死亡し、無職の祖父(89)が
一人で長女(中1)と長男(小4)を養育。父親が波にのまれ、無職の
母親(29)が小2から2歳までの男児4人を育てている世帯もある。
宮城県では津波で父親が死亡、母親と兄が不明。次男(小5)だけが
生き残ったが、別世帯の祖父母も亡くなり、祖母の妹(64)が保護者
となっている。これらはほんの一例にすぎない。
育英会が養育、就学、奨学の特別一時金申請を受け付けた孤児・遺児は既に1584人(大学生を含む)に上り、最終的には2千人に達する見通しだという。
震災遺児を取り巻く環境の厳しさは住宅、家計、教育、健康から地域
社会の崩壊まで多岐にわたり、幾つもの成育条件悪化の要因を抱える。
各家庭の自助努力の限界はとうに超えており、その分、育ちを保証す
る社会の包容力が問われている。とりわけ、今回の大震災では小学生ら幼い遺児の比率が高く、それだけ長期の支援が必要となる。
被災自治体は孤児に加えて、ひとり親家庭の調査に乗り出した。
遺児らの実態を正確につかめなければ、有効な対応策は期待できない。
民生委員らの協力を得ながら状況把握を急いで、行き届いた支援態勢と手だての構築につなげてほしい。
経済的な支援措置の充実は要の一つだ。
岩手県は修学支援基金をつくり、宮城県は育英募金を開設した。民間企業なども基金を立ち上げ、著名な建築家や科学者らが奨学金創設を呼び掛けた。
スポーツ選手らも基金を設立、協力を訴えている。寄付は誰にでもできる。
ふるさと納税制度を活用するのもアイデアで、一人一人が子どもたちの境遇を思いやって支援の流れをより太くしたい。心に傷を負った遺児らの精神的ケアも重要だ。官民挙げて万全の態勢を整えてほしい。
遺児に寄り添い、保護者の暮らしに目を配り、物心両面の支援に努める。
子どもは社会が守り育てるといわれるが、それは私たち自身が「もう一人の保護者」になることと受け止めたい。
2011年07月30日土曜日
(河北新報社 KOLNET社説より)
http://www.kahoku.co.jp/shasetsu/2011/07/20110730s01.htm
発生時に特に被害を受けやすい「災害弱者」は、その後もつらい立場
に置かれがちだ。保護者を亡くした子どもたちはその典型で、支援を求
めようにもすべさえ知らない状況にある。
突然、両親を失った孤児のダメージは計り知れない。
精神的な支えとともに、経済的なよりどころを喪失し、育ちゆく基盤が
根こそぎ奪われたに等しい。
父親、母親の一方を亡くした震災遺児の苦境も著しい。もともと母子、
父子世帯だった子どがおり、結果的に「孤児」となってしまったケースも
少なくない。住まいを失い、離職を余儀なくされた親が多く、十分な配慮
が必要という意味では、孤児とひとり親の間に大きな違いはない。
災害や病気などで親を失った遺児らの支援団体「あしなが育英会」
(東京)が分析した被災状況で、津波遺児の過酷な成育環境が浮かび上がる。
岩手県では母子世帯の母親が津波で死亡し、無職の祖父(89)が
一人で長女(中1)と長男(小4)を養育。父親が波にのまれ、無職の
母親(29)が小2から2歳までの男児4人を育てている世帯もある。
宮城県では津波で父親が死亡、母親と兄が不明。次男(小5)だけが
生き残ったが、別世帯の祖父母も亡くなり、祖母の妹(64)が保護者
となっている。これらはほんの一例にすぎない。
育英会が養育、就学、奨学の特別一時金申請を受け付けた孤児・遺児は既に1584人(大学生を含む)に上り、最終的には2千人に達する見通しだという。
震災遺児を取り巻く環境の厳しさは住宅、家計、教育、健康から地域
社会の崩壊まで多岐にわたり、幾つもの成育条件悪化の要因を抱える。
各家庭の自助努力の限界はとうに超えており、その分、育ちを保証す
る社会の包容力が問われている。とりわけ、今回の大震災では小学生ら幼い遺児の比率が高く、それだけ長期の支援が必要となる。
被災自治体は孤児に加えて、ひとり親家庭の調査に乗り出した。
遺児らの実態を正確につかめなければ、有効な対応策は期待できない。
民生委員らの協力を得ながら状況把握を急いで、行き届いた支援態勢と手だての構築につなげてほしい。
経済的な支援措置の充実は要の一つだ。
岩手県は修学支援基金をつくり、宮城県は育英募金を開設した。民間企業なども基金を立ち上げ、著名な建築家や科学者らが奨学金創設を呼び掛けた。
スポーツ選手らも基金を設立、協力を訴えている。寄付は誰にでもできる。
ふるさと納税制度を活用するのもアイデアで、一人一人が子どもたちの境遇を思いやって支援の流れをより太くしたい。心に傷を負った遺児らの精神的ケアも重要だ。官民挙げて万全の態勢を整えてほしい。
遺児に寄り添い、保護者の暮らしに目を配り、物心両面の支援に努める。
子どもは社会が守り育てるといわれるが、それは私たち自身が「もう一人の保護者」になることと受け止めたい。
2011年07月30日土曜日